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システム保守の自動更新で値上げされる条件|CPI連動・通知期限・上限の見方

システム保守契約が自動更新のたびに値上げされるとき、争点は金額ではなく、改定の条件・通知期限・上限が契約書に書かれているかです。公開されている保守約款4件の料金改定条項、CPIの2025年基準改定、労務費転嫁指針をもとに確認手順をまとめました。

システム保守の自動更新で値上げされる条件|CPI連動・通知期限・上限の見方

システム保守の契約が自動更新され、そのたびに保守料が上がっていく。値上げの通知は届くけれど、根拠として書かれているのは「経済情勢の変化」の一行だけ——この状況で最初に確認すべきなのは、金額が高いかどうかではありません。その値上げが、契約書のどの条項に基づいて行われているかです。

値上げそのものは不当ではありません。人件費は実際に上がっていますし、後述するとおり、国は発注者に対して「値上げの協議に応じること」を求める指針まで出しています。争点は上がったことではなく、上がる条件・通知の期限・上限が、上がる前に書かれていたかです。本記事は、公開されている保守約款4件の料金改定条項、消費者物価指数(CPI)の2025年基準改定、内閣官房・公正取引委員会の労務費転嫁指針を根拠に、届いた通知を判断できる形へ分解します。値上げ幅の相場は扱いません(理由は「根拠資料と適用条件」に書きます)。

TL;DR|争点は「上がったこと」ではなく、上がる条件が先に書かれていたか

  • 「自動更新だから同じ条件で続く」は成り立たないことがあります。 本記事で確認した公開約款のうち1件は、自動更新の条項で「更に1年間同一条件で延長され」と定めながら、別の条で事業者側に保守料金の改訂権を置いていました。別の1件は、自動延長の条項の中に「(料金に関する定めを除く)」と明記し、延長後の料金は協議で決めるとしていました。自動更新の条項だけを読んでも、料金が据え置かれるかどうかは分かりません
  • 決め手は、2つの期限の前後関係です。 値上げの通知期限が、更新を断る期限よりにないと、読者は金額を知ったうえで断ることができません。確認した4件のうち通知期限まで定めていた2件では、値上げの通知期限が「適用日の3か月前」で更新拒絶が「満了の1か月前」という余裕のある型と、料金改定の通知が「1か月以上前」で解約予告も「1か月前」という余裕のない型に分かれました。残る2件は、料金の改定について予告期間を定めていません
  • 「CPI連動」と書いてあるだけでは計算できません。 消費者物価指数には総合・生鮮食品を除く総合・生鮮食品及びエネルギーを除く総合があり、さらに2026年7月分から2025年基準へ切り替わりました(2026年8月21日公表)。系列名と、基準改定が起きたときの扱いが決まっていないと、同じ条項でも計算結果が変わります。そもそも保守料の原価は技術者の人件費なので、参照すべき資料は消費者物価より、企業間で取引されるサービスの価格や賃金の公表資料に近くなります
  • 値上げの説明は、労務費・実費・その他の3区分に分けてもらえば判断できます。 内閣官房・公正取引委員会の指針の別添様式は、値上げの見積書の内訳を原材料価格・エネルギーコスト・労務費・その他の4区分で書く形になっています。保守契約で動くのは労務費と、その他(クラウド利用料・ライセンス費・再委託費)です。原価の内訳表まで求める必要はありません。 交渉に応じる条件として詳細な内部情報まで求め、それが示されないことを理由に協議せず据え置くことは問題になりうる、と同じ指針が書いています
  • 判断は「高い/安い」ではなく、説明済み/要確認/高リスク/判断不能の4状態で行います。 実務でもっとも多く出るのは判断不能です。自動更新は書面を作らずに契約が続く仕組みなので、何年も経つと「いま有効な契約書はどれか」が社内で分からなくなります。その場合に最初にやることは、値上げへの回答ではなく、有効な契約書・約款の版と、直近の注文書・請求書を揃えることです
  • 値上げを断ること自体にリスクがある立場もあります。 内閣官房・公正取引委員会の労務費転嫁指針は、発注者が採るべき行動として「協議のテーブルにつくこと」「発注者から定期的に協議の場を設けること」を挙げ、明示的に協議せずに長年価格を据え置くことが独占禁止法上の優越的地位の濫用や中小受託取引適正化法上の買いたたきに当たるおそれがあるとしています(適用には資本金・従業員数の条件があります。後述)
  • 自社の条項に何が足りないかは、公共工事の標準約款を物差しにすると測れます。 公共工事標準請負契約約款の第26条は、発動時期(工期内で契約から12月経過後)、要件(賃金水準または物価水準の変動)、変動のうち改定に反映しない部分(変動前残工事代金額の千分の十五まで)、請求できる当事者(発注者・受注者の双方)を条文で、参照資料の書き方(国又は国に準ずる機関が定期的に公表する資料の名称を記入する)を注記で決めています。建設工事の約款なので保守契約に適用されるものではありませんが、次回更新で書き足すべき項目はここから引き出せます
  • 手を打つ場所は今回の通知ではなく、次の更新です。 通知が届いてからできるのは「受け入れるか、期限内に断るか」の二択です。条件・上限・通知期限を書き加えられるのは更新のタイミングだけなので、今回の対応と並行して、次回の契約文言を用意してください

「自動更新だから同じ条件」は、契約書の書き方次第で成り立たない

保守契約の値上げが分かりにくいのは、自動更新の条項と、料金改定の条項が別の場所に置かれているからです。契約書を「更新」で検索すると期間の条項は見つかりますが、料金を動かす権限は料金の条項か、約款変更の条項の側にあります。片方だけを読むと、書かれていないことを読み取ったことになります。

実例を1つ挙げます。株式会社エスアイ・システムのソフトウェア保守サービス契約条項(改定告知日2025年9月12日/適用日2025年10月15日、2026年8月24日取得)は、第8条で契約期間をこう定めています。

本契約の契約期間は、納品月の初日から起算した1年間とする。但し、期間満了期日の1カ月前までに、甲乙いずれからも申出がない場合は、更に1年間同一条件で延長され、第9条(契約の解約及び変更)または第14条(契約の解除)に基づき解約または解除されるまで自動的に更新される。

「同一条件で延長」と書かれています。ところが同じ約款の第6条(保守料金)第8項には、次の定めがあります。

経済情勢の変化等による物価の大幅な変動等、必要かつ合理的理由がある場合、乙は、保守料金を改訂することができるものとする。なお、保守料金を変更する場合、乙は、甲に対し、変更後の価格を適用する3か月前までにこれを通知するものとし、甲が変更後の価格適用日までに解約手続きを行わない場合または変更後の価格適用日以降に本ソフトウェアを利用した場合、甲は当該変更後の価格に同意したものとみなす。なお、乙の甲に対する通知の方法等は、第23条の定めに従う。

この2つは矛盾しません。 自動更新は「更新のときに条件を変えない」という意味であって、契約期間中に料金改定の条項が発動することを妨げていないからです。自社の契約書で「同一条件で更新」という文言を見つけても、それだけでは料金が固定されているとは読めません。料金の条項と、約款・規約の変更の条項を、期間の条項とセットで読んでください。

逆に、料金が対象外であることを更新条項の中で明示している例もあります。株式会社デジタルキューブの保守契約約款(2025年8月26日改定、2026年8月24日取得)第11条第3項です。

甲または乙から本契約期間満了の一ヶ月前までに契約更新を拒絶する旨の書面による意思表示がないときは、本契約期間満了日の翌日から本契約と同様の条件で(料金に関する定めを除く)12ヶ月間本契約を延長継続するものとし、その後も同様とします。本契約が延長継続された場合、甲と乙は、協議の上、契約料金を定めるものとします。

「料金に関する定めを除く」という11文字が、この条項の性格を決めています。 自動延長はするが、料金は毎回決め直す、という設計です。読者にとって不利に見えるかもしれませんが、後述する労務費転嫁指針が発注者に求める「定期的な協議の場」とは、むしろこちらの型が整合します。書かれていないより、書かれているほうが読めるという点は、値上げの議論でも変わりません。

自動更新にすると、価格を見直す機会そのものが消えることがある

契約条項ではなく、運用の側で起きることもあります。アンテナハウス株式会社が公開している「通常保守サービス」自動更新に関して(2026年8月24日取得)には、自動更新契約に申し込むと何が変わるかが、こう書かれています。

弊社から「通常保守サービス」の契約更新のご確認の連絡や見積書の発行が無くなります。 また、お客様から契約更新にあたって発注書等の書類の提出も不要となります。

同ページには、これが更新手続きの簡略化を目的としたものであることが明記されており、運用としては合理的です。ただし発注側から見ると、毎年届いていた見積書が届かなくなるということでもあります。見積書は金額を確認する機会であると同時に、対象範囲・数量・期間を確認する機会でもありました。自動更新へ切り替えるなら、その機会を社内カレンダーの側で復元しておかないと、次に金額を意識するのは値上げ通知が届いたときになります。

同ページには解約についても、契約期間終了の1か月前までに連絡がない場合は自動更新すること、更新後の途中解約と返金はできないことが書かれています。「毎年見直す」を人の記憶に頼らない仕組みへ移すという一点だけでも、更新期限の管理には価値があります。

公開されている保守約款4件では、値上げの条件がこう書かれている

自社の契約書を1本読んでも、その書き方が普通なのかどうかは判定できません。比べる相手が要ります。ここでは、料金の改定または規約の変更まで読める公開の約款・規約を4件選び、2026年8月24日時点の内容で並べます。

事業者文書名文書に記載の日付対象
エスアイ・システムソフトウェア保守サービス契約条項(株式会社エスアイ・システム)改定告知日2025年9月12日/適用日2025年10月15日自社パッケージソフトウェア
ラディックス保守契約規約(ラディックス株式会社)制定1996年4月1日/改定2017年11月1日情報通信機器、複写機・複合機、同社指定の業務管理ソフト
デジタルキューブ保守契約約款(株式会社デジタルキューブ)2025年8月26日改定WordPressサイト
ゾーホー年間保守サポートサービス規約(ゾーホージャパン株式会社)2017年5月1日制定/2021年4月14日改定自社製品(ManageEngine)

4件はいずれも、定型の製品やサービスに紐づく約款です。 個別に締結するスクラッチ開発の保守契約とは成り立ちが違うため、条項の文言をそのまま自社に当てはめることも、値上げ幅の相場として読むこともできません。見るべきは、同じ「値上げ」という出来事が、どれだけ違う条件で運用されているかの一点です。

論点エスアイラディックスデジタルキューブゾーホー
料金を動かす条項第6条(保守料金)第8項基本条項第8条(保守契約料金および支払方法)第3項第11条(期間)第3項(延長後の料金は協議)第15条(本規約の変更)。料金の額そのものは第5条第1項で「別途書面により定める」
発動の条件「経済情勢の変化等による物価の大幅な変動等、必要かつ合理的理由がある場合条項に記載なし(理由の限定がない)延長のたびに協議その理由を問わずいつでも任意に」(規約の変更について)
通知の期限変更後の価格を適用する3か月前まで改定日の1か月以上前(文書)記載なし(協議で定める)通知の時点で効力を生じる(予告期間の定めなし)
通知の方法第23条の定めに従う文書ポータルサイト又は自社サイトへの掲載(別途定める場合を除く)
上限・上げ幅の制限記載なし記載なし記載なし(協議)記載なし
同意のみなしあり(適用日までに解約手続きをしない、または適用日以降に利用した場合)記載なしあり(変更後も利用する場合)
更新の型自動更新(同一条件で1年延長)個別条項ごとに異なる。ハードウェアとカウンター契約は自動延長、ソフトウェアの個別条項に自動延長の定めはない自動延長(料金に関する定めを除く同条件で12か月)更新意思型(満了日の前日までに更新の注文書がなければ期間満了で終了)
更新を断る期限満了期日の1か月前までハードウェア個別条項第3条第2項は満了日の30日以上前(文書)満了の1か月前まで(書面)更新しなければ終了(断る手続き自体が不要)
期中の解約更新前の最初の契約期間の経過後に可(1か月以上前の書面)。残期間分の支払いで期中解約も可甲乙とも1か月前までの文書通知で可所定の『保守契約解約申込書』の提出で可「いつでも」可

表中の記号は2種類を使い分けています。「—」は、その約款の建て付け上その概念が生じないことを示します(デジタルキューブは料金を毎回協議で決めるため、通知の方法やみなし同意の定めがそもそも要りません)。「記載なし」は、条項に定めが置かれていないことを示します。書かれていないことの意味を読むのがこの表の目的なので、この2つは分けてあります。

ラディックスの料金改定は、基本条項第8条第3項の1文だけで完結しています。

乙は、甲に対し1ヶ月以上前に文書による通知を行うことにより、本契約の保守料金を改定できるものとする。

理由の限定も、上限も、改定できる回数の制限もありません。 ここで重要なのは「だから不当だ」ということではなく、この条項の下では、値上げの妥当性を条項の側から争う材料がないという事実のほうです。判断材料は金額と説明にしか無いので、後述する確認質問と内訳の分解が、そのまま唯一の手段になります。

同じ規約の第19条(規約の改定)第2項には、通知の方法についてこう書かれています。

前項の改定を行う場合、乙はその改定内容により以下のいずれかの方法で、改定日の1ヶ月以上前に甲に通知するものとする。 (1)甲への直接通知 (2)乙のホームページ(http://www.radix.ad.jp/support/hoshu-rule.html)への掲載

ホームページへの掲載で通知が成立する型です。 直接の連絡が来るとは限らない、ということでもあります。自社の契約書に同種の定めがあるなら、その掲載先URLを更新期限と一緒に社内へ記録しておかないと、気づけません。

ゾーホーの規約変更条項(第15条)は、より広い書き方です。

1 当社は、その理由を問わず本規約をいつでも任意に変更することができるものとし、契約者はこれに同意します。 2 当社が別途定める場合を除き、本規約の変更は、ポータルサイト又は当社サイトに掲載する方法によって契約者へ通知します。 3 本規約の変更は、前項の通知の時点より効力を生じるものとします。 4 契約者が本規約変更後も本サービスを利用する場合、本規約の変更に同意したものとみなします。

ただし同規約は、料金の額そのものを第5条第1項で「別途書面により定める」ものとしています。規約変更の条項が広いことと、料金が一方的に動くこととは、この規約では直結していません。条項の文言だけで結論を出さず、料金の額がどこで決まる建て付けになっているかを先に確認してください。

この4件から読み取れる、値上げ条項の4つの型

①条件つき事前通知型(エスアイ) — 発動の理由を限定し、適用の3か月前までに通知し、期限までに解約しなければ同意とみなす。読者から見ると、金額を知ってから断るまでの時間が確保されている型です。ただし上限はありません。

②無条件事前通知型(ラディックス) — 1か月以上前に文書で通知すれば改定できる。理由も上限もありません。更新のタイミングに紐づいていないため、期の途中でも発動しえます。

③更新時協議型(デジタルキューブ) — 自動延長するが料金は毎回協議で決める。協議が整わないまま更新日を迎えると、料金が未確定のまま延長が始まるという別の不確実性があります。協議の開始時期を決めておく必要があります。

④規約変更型(ゾーホー) — 規約の変更として条件が動く型。この規約では料金の額自体は別書面ですが、規約側に「理由を問わず」と書かれている契約では、変更の予告期間がゼロということが起こりえます

自社の契約書がどの型かは、次の4語を検索すれば判定できます。「改定」「改訂」「変更」「協議」。この4語が料金の条項の周りに1つも出てこない契約書は、型が決まっていない状態です。その場合、値上げの根拠は契約書の外(交渉と力関係)にしかありません。次回更新のタイミングで書き足す対象になります。

参考|延長すると自動的に割増になる、と書いてある例

値上げの条件が明文化されている例として、ラディックスの個別条項(カウンター契約)の第7条を挙げておきます。

前条第3項に基づき本契約の有効期間が延長された場合、当該延長期間におけるカウンター料金は、本個別条項第2条に基づき計算されたカウンター料金に、その10%に等しい額(経年割増料金)を加算した額とする。

これは複写機・複合機のカウンター契約の個別条項であり、ソフトウェアの保守契約ではありません。 そのまま自社に当てはめられるものではないので、率の数字は参考にしないでください。読むべきは、「延長したら◯%」を条文で先に決めておくという書き方が実在するという点です。同個別条項の第6条第1項は有効期間を設置日から7年と定め、第3項で、満了日の30日以上前に甲乙いずれからも文書による別段の意思表示が無く、かつ第2項の限度日(メーカーの保守対応部品供給終了日)を超えていない場合に自動延長するとしています。上げ幅と発動条件が事前に読める状態は、上がらないことよりも扱いやすい、という一例として置きます。

値上げ通知が届いた日から、選択肢が消えるまでの日数を数える

値上げへの対応でもっとも多い失敗は、検討しているうちに更新を断る期限が過ぎていたというものです。ここで効いてくるのが、前掲の表で分けた2つの期限——値上げの通知期限更新を断る期限——の前後関係です。

値上げの通知期限更新を断る期限読者に残る検討時間
通知が先行する型適用日の3か月前満了の1か月前約2か月。金額を知ったうえで断るかどうかを決められる
期限が並ぶ型改定日の1か月以上前解約予告も1か月前実質ゼロ。通知を受けたその日に解約を決めてようやく間に合う計算で、社内決裁の時間は残らない
通知期限の定めがない型定めなし満了の1か月前不定。更新を断る期限を過ぎてから金額が提示されることがありうる
更新意思型定めなし(規約変更は通知時点で効力)更新の注文書を出さなければ終了更新しないことで抜けられる。ただし更新を忘れると保守が切れる

自社の契約書で、次の6つの日付を埋めてください。前半3つは契約書から、後半3つは社内の事情から決まります。

順番埋める日付確認元
契約満了日契約期間の条項
更新を断る期限(①から予告期間を引いた日)更新・解約の条項
値上げの通知が届くべき最も遅い日料金改定・規約変更の条項
更新するかどうかの社内決裁が完了している必要がある日(②の手前)社内の決裁規程
ベンダーへの確認質問の回答が揃っている必要がある日(④の手前)後掲の確認質問8問
確認質問を送る日(⑤の手前)回答に要する期間の想定

③が②より後(=通知のほうが遅い)になる契約では、金額を知る前に更新の可否を決めなければなりません。 これは条項の設計の問題であって、交渉で解決するものではありません。次回更新時に、値上げの通知期限を、更新拒絶の期限より前へ移すことを提案してください。それだけで、毎年の判断が「受け入れるしかない」から「比べて決める」に変わります。この項目は、記事の後半の次回更新で条項に書き足す7項目にも入れてあります。

なお、更新を断る手続き、解約の予告期間、必要な書式そのものについては、システム保守会社は変更できる?必要な資料・権限・引き継ぎ条件で出口の条項を扱っています。本記事は「更新と値上げ」に絞り、解約後の引き継ぎには立ち入りません。

「CPI連動」と書いてあっても、どのCPIかが決まっていないと計算できない

値上げの根拠として「消費者物価指数に連動して改定します」と書かれた条項や通知は、一見すると客観的です。しかしそのままでは計算できません。理由は3つあります。

理由1|消費者物価指数は1つではない

総務省統計局が公表する消費者物価指数は、全国の月次結果の概要だけでも次の3系列が並記されています(2025年基準、全国2026年(令和8年)7月分、2026年8月21日公表)。

系列指数(2025年=100)前年同月比
総合指数102.0+1.9%
生鮮食品を除く総合指数102.1+1.8%
生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数102.1+1.9%

この月は3系列の差が小さく見えますが、生鮮食品やエネルギーの価格が動いた月には差が開きます。契約に「消費者物価指数」としか書かれていなければ、どれを使うかは通知を出す側が選べます

理由2|指数の基準年は5年ごとに切り替わる

より見落とされやすいのがこちらです。総務省統計局の消費者物価指数2025年基準改定計画(令和7年11月14日)は、統計法に基づく統計基準(「指数の基準時に関する統計基準」)を引いて、こう書いています。

「指数の基準時は、五年ごとに更新するものとし、西暦年数の末尾が0又は5である年とする。」とする統計基準に沿って、指数の基準時(指数を 100 とする年次)を 2020 年から 2025 年に更新する。

つまり、基準年は5年ごとに切り替わることが、あらかじめ決まっています。今回の切り替えの日付も公表されており、総務省統計局の2025年基準改定に伴う公表スケジュールについて(令和8年6月19日)によれば、2025年基準による遡及結果と接続指数が令和8年8月7日、全国2026年(令和8年)7月分が令和8年8月21日に公表されています。

その結果、2026年8月に公表された「102.0」という指数と、その1年前に公表されていた2020年基準の指数の値は、同じ物差しの上に乗っていません。契約に「契約時点の消費者物価指数を基準として、その上昇率を乗じる」とだけ書いてあると、基準改定をまたいだ瞬間に計算の前提が崩れます。

総務省統計局の2025年基準改定について(2026年8月7日公表)には、接続指数についてこう書かれています。

接続指数は、過去の指数を2025年基準の指数と比較ができるよう換算したものです。なお、変化率については、接続した指数により再計算することなく、各基準において公表した値をそのまま用います。

換算のための指数が別途公表されているということです。裏を返せば、換算が必要なほど基準改定の影響は大きい、ということでもあります。CPI連動条項を書くなら、基準改定が起きたときにどちらの系列を使うかまで決めておく必要があります。

理由3|保守料の原価は、消費者が買う物の価格ではない

そもそも、システム保守の費用を主に動かしているのは技術者の人件費です。世帯が購入する財・サービスの価格を測る消費者物価指数は、その代理指標としては遠い位置にあります。企業間で取引されるサービスの価格には、日本銀行の企業向けサービス価格指数という別の統計があり、こちらには保守により近い品目が含まれています(2020年平均=100、2026年6月速報、2026年7月27日公表)。

統計・系列発行基準直近値前年比何の価格を測っているか
消費者物価指数 総合総務省統計局2025年=100102.0(2026年7月分)+1.9%世帯が購入する財・サービス
企業向けサービス価格指数 総平均日本銀行2020年=100114.3(2026年6月速報)+3.2%企業間で取引されるサービス全体
同 情報通信(大類別)日本銀行2020年=100108.0(2026年6月速報)+2.6%通信・放送・ソフトウェア開発・情報処理等
同 ソフトウェア開発(小類別)日本銀行2020年=100112.1(2026年6月速報)+3.0%ソフトウェア開発
同 情報処理・提供サービス(小類別)日本銀行2020年=100107.5(2026年6月速報)+1.4%情報処理・提供サービス

ただし、消費者物価指数を根拠にすること自体が不適切だという意味ではありません。 前掲の労務費転嫁指針は、受注者が根拠として用いる資料について、最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額などを挙げたうえで、「これらのほか、経済の実態が反映されていると考えられるものとして」参考となる資料の1つに「総務省が公表している消費者物価指数」を挙げています。ここで言いたいのは、CPIだけを見ていると、保守料の動きを説明できないことがあるという点です。

この表の指数は、いずれもサービスそのものの取引価格であって、人件費そのものの指数ではありません。 賃金の動きを直接見るなら、指針が挙げている最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額、厚生労働省の毎月勤労統計調査のほうが直接の資料になります。

また、この表は同じ月の比較ではありません。 消費者物価指数は2026年7月分、企業向けサービス価格指数は2026年6月速報です。公表の周期と時期が違う統計を並べているので、差をそのまま「どちらが何ポイント高い」と読まないでください。読み取ってほしいのは水準の差ではなく、同じ「情報通信」の中でも、小類別によって前年比が倍以上違うという点です。ひとくくりの物価では、保守料の原価は説明できません。

指数を使うなら、この5点を特定する

以上から、料金改定の根拠に指数を使うなら、次の5点が特定されていないと計算が一意に決まりません。自社の条項を、この5点で採点してください。

#決めること決まっていないと起きること
1統計名と系列名(例:消費者物価指数のどの系列か、企業向けサービス価格指数のどの品目か)通知を出す側が有利な系列を選べる
2参照する時点(例:改定日の属する年の前年平均、直近公表月)同じ指数でも切り取る期間で率が変わる
3基準時(基準年)が改定されたときの扱い5年ごとに計算の前提が崩れる
4指数の変動をどの割合で料金へ反映するか(全額か、一部か)「連動」の意味が合意されない
5端数処理と改定の頻度(年1回か、随時か)小刻みな改定が積み上がる

この5点は指数を使う場合に限った話です。契約全体で書き足す項目は、記事の後半にある次回更新で条項に書き足す7項目にまとめてあります。

なお、契約で価格を固定する期間(プライスロック)を先に決めておく設計もあります。SAPはSAP Enterprise Supportの公式ページ(2026年8月24日取得)で、既存契約について initial period と first renewal period の間は値上げしないこと、その期間を過ぎるとCPIによる年次の値上げがありうること(原文では "subject to contract terms" という限定つき)を明示しています。同ページのリスト価格22%の記載には "until 2025" という期限つきの表現が残っており、2026年以降の値は本記事では未確認です。SAPの保守料の分母と22%の意味については、SAP保守料22%の仕組みで扱っています。ここで参考にするのは金額ではなく、値上げしない期間を条文の側で定義しておくという設計のほうです。

実際に費用を生む作業は何か|値上げ分を労務費・実費・その他へ割る

値上げの通知に「経済情勢の変化により」としか書かれていないとき、読者にできるのは金額を受け取るか断るかの二択です。ここを判断可能にするには、内訳を区分に割ってもらうしかありません。そして、その区分には公的な様式があります。

内閣官房・公正取引委員会の労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(令和5年11月29日策定、令和8年1月1日改正)には、別添として「価格交渉の申込み様式(例)」が付いています。これは受注者が発注者へ値上げを申し込むときの見積書の様式例で、合計金額の内訳を次の4区分に分けるよう作られています。

区分様式に挙げられている例保守契約で該当しやすいもの
1 原材料価格素材費、部品購入費等交換部品、機器(ハードウェア保守がある場合)
2 エネルギーコスト電気代、ガス代、ガソリン代等自社データセンターを持つ場合の電力(多くの保守契約では小さい)
3 労務費定期昇給、ベースアップ、法定福利費等技術者の人件費。保守の値上げの中心
4 その他設備償却費、保管料、輸送費、外注費(仕入れ先の労務費等も含む)等クラウド利用料・ライセンス費・再委託先への支払い

この様式は製造業を念頭に置いた項目立てになっています。 保守契約では1と2はほとんど動かず、3と4に集中するのが通常です。だからこそ、「3と4はいくらか」と分けて聞くだけで、通知は判断できる形に変わります

同様式は労務費の算定について、2つの計算例を示しています。ひとつは「改定前の労務費総額×労務費の上昇率×貴社向け売上比率」、もうひとつは「現在の労務費単価×人数(人・日)×労務費の上昇率」という組み立てで、上昇率には最低賃金・春季労使交渉妥結額等の上昇率を用いるとしています。様式には、自社だけでなく、自社の発注先やその先の取引先における労務費も考慮することという留意事項も添えられています(これは様式を書く受注者側への留意事項です)。値上げの説明を求めるときは、この形に沿った回答を求めれば、双方にとって作りやすくなります。

「値上げ」ではなく「対象が増えた」ケースを分ける

内訳を分けると、そもそも値上げではないものが混ざっていることがあります。前掲のエスアイ・システムの約款第6条第2項には、こう書かれています。

納品台数分を超える機器若しくは納品以外のオプションを使用する場合は、乙は保守料金の見直しを行うことができる。

これは物価とは無関係で、保守の対象が増えたことによる見直しです。同じ「保守料が上がる」でも、次の3つは切り分けて扱う必要があります。

上がった理由確認するもの判断の軸
対象範囲が増えた(サーバー台数、ライセンス数、店舗数、連携本数など)前年と今年の数量の差数量が実際に増えているか。増えた分の単価は妥当か
実費が上がった(クラウド利用料、サードパーティのライセンス、再委託費)請求書または一次原価の提示実費が役務の対価に溶けていないか
役務の対価が上がった(人件費・体制の維持)労務費の内訳と根拠となる公表資料体制(人数・時間帯・応答目標)が変わっていないか

数量が増えたことによる増額は、値上げ交渉ではなく数量の検証の話です。保守費用の内訳をコストドライバーごとに分解する手順は、システム保守費用の相場と妥当性にまとめてあります。

値上げが合理的と言えるケース|「協議に応じない」ほうにリスクがある場合がある

ここまで確認手順を書いてきましたが、値上げを断ることが常に安全とは限りません。国は、発注者に対して価格転嫁の協議に応じるよう求める指針を出しています。

先に、この節が自社に当てはまるかを確認してください。判定は2段階です。 1段目は、その保守が「自ら用いる役務」かどうか。自社の業務システムの保守を委託しているだけなら、中小受託取引適正化法の対象にはなりません(根拠は後掲の「この話が自社に当てはまる条件」)。この法律が正面から効くのは、保守の対象システムを使って自社が顧客へサービスを提供している場合や、ソフトウェアの受託開発・提供そのものを業としている場合です。 2段目が資本金で、システム保守でよくある取引区分では、自社が資本金3億円超で保守会社が3億円以下、または自社が1,000万円超3億円以下で保守会社が1,000万円以下、という関係のときに当てはまります。

1段目で外れる読者のほうが多数です。それでもこの節は無駄になりません。 資本金の要件によらず問題になりうる独占禁止法上の優越的地位の濫用と、指針が発注者に求める行動(定期的に協議の場を設ける/根拠は公表資料までにとどめる)は、立場にかかわらず値上げへの向き合い方の軸になります。以下はその前提で読んでください。

前掲の労務費転嫁指針は、発注者・受注者それぞれが採るべき行動を12の行動指針として整理しています。内訳は発注者6つ、受注者4つ、双方共通2つです(同指針の改正概要より)。

立場行動指針
発注者①本社(経営トップ)の関与/②発注者側からの定期的な協議の実施/③説明・資料を求める場合は公表資料とすること/④サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと/⑤要請があれば協議のテーブルにつくこと/⑥必要に応じ考え方を提案すること
受注者①相談窓口の活用/②根拠とする資料/③値上げ要請のタイミング/④発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示
双方①定期的なコミュニケーション/②交渉記録の作成、発注者と受注者の双方での保管

本記事で使うのは、発注者の②と③、双方の②の3つです。 残りは指針本体をご確認ください。

このうち、保守契約の自動更新に直接効くのが発注者の行動②です。指針本文にはこう書かれています。

受注者から労務費の上昇分に係る取引価格の引上げを求められていなくても、業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回など定期的に労務費の転嫁について発注者から協議の場を設けること。 特に長年価格が据え置かれてきた取引や、スポット取引と称して長年同じ価格で更新されているような取引においては転嫁について協議が必要であることに留意が必要である。

「長年同じ価格で更新されているような取引」は名指しされています。 自動更新で保守料が何年も動いていない契約は、発注者側から協議の場を設けるべき対象として指針が想定している類型に入りえます。

さらに行動③は、根拠資料の求め方についてこう定めています。

労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合は、公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など)に基づくものとし、受注者が公表資料を用いて提示して希望する価格については、これを合理的な根拠があるものとして尊重すること。

前節で「内訳を分けて出してもらう」と書いたのは、この範囲までです。 同じ行動③には「留意すべき点」が添えられており、限定が二重に掛かっています。 問題になりうるとされているのは、①価格交渉に応じる条件として詳細な情報を求め、②それが示されないことを理由に、明示的に協議しないまま価格を据え置く場合です。追加の質問をすること自体が問題になる、と書かれているわけではありません。原文は次のとおりです。

価格交渉を行うための条件として、労務費上昇の理由の説明や根拠資料につき、公表資料に基づくものが提出されているにもかかわらず、これに加えて詳細なものや受注者のコスト構造に関わる内部情報まで求めることは、そのような情報を用意することが困難な受注者や取引先に開示したくないと考えている受注者に対しては、実質的に受注者からの価格転嫁に係る協議の要請を拒んでいるものと評価され得るところ、これらが示されないことにより明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は中小受託取引適正化法上の買いたたきや協議に応じない一方的な代金決定として問題となるおそれがあることに、発注者は留意が必要である。

それでも実務上は、原価の内訳表を出させることを目的にしないでください。 求めるのは「どの区分が、どの公表資料に基づいて、いくら上がったか」までです。

据え置き続けることが問題になりうる条件

指針は、要するに次の2つを問題としています。①受注者から言われていなくても、協議しないまま何年も価格を据え置くこと。②受注者から協議を求められたのに、応じずに価格を決めてしまうこと。 原文は次のとおりです(行動②の「留意すべき点」)。

労務費のコスト上昇分の価格転嫁につき、受注者からの要請の有無にかかわらず、明示的に協議することなく取引価格を長年据え置くことや実質的にはスポット取引とはいえない取引であるにもかかわらずスポット取引であることを理由に労務費の転嫁について明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は中小受託取引適正化法上の買いたたきとして、受注者から協議の要請があった場合に、当該協議に応じず一方的に取引価格を据え置くことは、中小受託取引適正化法上の協議に応じない一方的な代金決定として、それぞれ問題となるおそれがあることに、発注者は留意が必要である。

同じ指針は、逆向きの整理も置いています。発注者として採るべき6つの行動と、発注者・受注者双方が採るべき2つの行動の全てを適切に採っている場合には、取引条件の設定に当たり取引当事者間で十分に協議が行われたものと考えられ、通常は独占禁止法および中小受託取引適正化法上の問題は生じないと考えられる、というものです(指針 第1の3)。問われているのは値上げを受け入れたかどうかではなく、協議の場を設けて記録を残したかどうかだ、と読めます。

ここで出てくる「協議に応じない一方的な代金決定」は、2026年1月1日に施行された改正で新たに置かれた禁止行為です。根拠条文は製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号。略称は中小受託取引適正化法/取適法。令和7年法律第41号による改正、2026年1月1日施行)第5条第2項第4号です。

中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること。

この話が自社に当てはまる条件

まず、資本金の大小より先に効く条件があります。 公正取引委員会・中小企業庁の中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)は、役務提供委託について次のように書いています。

なお、当該役務が、委託事業者が他者に提供する目的たる役務である場合には、本法第2条第4項の「役務提供委託」に該当するが、当該役務が自ら用いる役務である場合には、当該委託取引は、本法の対象とならない。

自社が業務に使っているシステムの保守を委託しているだけなら、その役務は「自ら用いる役務」であり、この法律の対象になりません。 情報成果物作成委託のほうも、法第2条第3項は、自社が使う情報成果物については「その使用する情報成果物の作成を業として行う場合」に限っています。つまり、自社でソフトウェアの作成を業として行っている会社が、その一部を外注している、といった関係が必要です。

したがって、この法律が正面から効くのは、保守の対象システムを使って自社が顧客へサービスを提供している場合や、ソフトウェアの受託開発・提供そのものを業としている場合が中心になります。多くの事業会社が自社の業務システムの保守を委託しているだけの関係では、この法律ではなく、前掲の独占禁止法上の優越的地位の濫用と、指針が求める行動のほうが判断の軸になります。

そのうえで、資本金の条件です。 同法第2条第8項・第9項は、委託事業者と中小受託事業者を資本金と従業員数の組み合わせで定義しており、取引の内容によって基準が2通りに分かれます。ここで出てくる「情報成果物作成委託」「役務提供委託」は、プログラムの作成を伴う委託か、作業の提供を受ける委託か、という法律上の区分です。同テキストは、この区分をこう整理しています。

取引の内容委託する側(自社)委託を受ける側(保守会社)
情報成果物作成委託のうちプログラムの作成/役務提供委託のうち情報処理(ほかに運送、物品の倉庫における保管)資本金3億円超資本金3億円以下の法人または個人
同上資本金1,000万円超3億円以下資本金1,000万円以下の法人または個人
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託資本金5,000万円超資本金5,000万円以下の法人または個人
同上資本金1,000万円超5,000万円以下資本金1,000万円以下の法人または個人

同テキストは、「プログラムの作成」にはソフトウェア等の作成(コーディング作業も含む)が当たり「情報処理」には情報処理システムの運用(データ入出力、移動管理、障害管理、資源管理、セキュリティ管理等)を行うことなどが当たるとしています。どちらに該当するかは、同テキストによれば「業務委任契約であるかといった契約上の形態は問わず、取引の内容から判断する」ものとされています。

資本金の基準が適用されない場合には従業員数の基準が適用され、上2行にあたる取引では常時使用する従業員300人超と300人以下、それ以外では100人超と100人以下の組み合わせになります。

また、自社が保守会社より小さい場合や、保守会社が大企業である場合も、この法律の保護は逆方向には働きません。 独占禁止法上の優越的地位の濫用は資本金の要件によらず問題になりえますが、こちらは取引上の地位が優越していることが前提になります。個別の取引が該当するかどうかの判断は弁護士の領域です。

実際に、協議はどの程度行われているのか

公正取引委員会の令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査では、発注者の立場として、受注者からの労務費上昇を理由とした取引価格の引上げの求めに応じて価格協議をしたかどうかが集計されています(指針の改正について、内閣官房・公正取引委員会、令和7年12月)。

回答割合
協議した(全ての商品・サービスについて)60.9%
協議した(一部の商品・サービスについて)8.8%
協議しなかった/求めが無かった30.3%

同資料は、改正で追記するグッドプラクティスの対象を選んだ観点の1つとして、注意喚起文書の送付件数が多い業種を挙げ、その例に「情報サービス業、総合工事業」を記載しています。ただし、この文書が発注者・受注者のどちらへ送付されたものかは同資料に記載がありません。 ここで読み取れるのは、価格転嫁をめぐって行政が働きかけている業種にシステム保守の周辺が含まれている、という程度までです。

この節の結論は「値上げを受け入れよう」ではありません。 受け入れるかどうかは金額と内訳を見てから決めることです。ここで確認したいのは、協議を拒むという選択肢のコストが、思っているより高いことがあるという一点です。

確認が必要なケース|値上げ通知を4状態に仕分ける

届いた通知を、次の4状態に割り当ててください。「高い/安い」ではなく「判断できる/できない」で分けます。

#通知に書かれていること状態
1改定の根拠条項が示され、条項の発動要件を満たす説明がある説明済み
2上昇率の根拠として、公表資料の名称と参照時点が書かれている説明済み
3内訳が労務費・実費・その他に分かれ、区分ごとの増額が書かれている説明済み
4対象範囲(台数・ライセンス数・応答目標・対応時間帯)が前年と同じであることが明記されている説明済み
5「経済情勢の変化」等の理由だけが書かれ、参照した資料の名称がない要確認
6改定率は書かれているが、何に対する率か(月額全体か、役務部分だけか)が不明要確認
7適用日が書かれているが、更新を断る期限との関係が示されていない要確認
8値上げと同時に対象範囲やSLAが変わっているが、差分が示されていない高リスク
9通知の日付から適用日までが、契約書の通知期限より短い高リスク
10契約書に料金改定の条項が見当たらず、通知だけが届いている高リスク
11契約書・注文書・約款のどれが有効な版か特定できない判断不能
12自動更新後の契約書面が手元になく、現在の契約条件を確認できない判断不能

「高リスク」は金額が高いという意味ではありません。 手元の情報では検証できない状態、という意味です。8・9・10に当たる場合は、金額の交渉より先に、根拠条項と差分の提示を書面で求めてください

11・12の「判断不能」が、実務ではもっとも多く出ます。 自動更新は書面を作らずに契約が続く仕組みなので、何年も経つと「いま有効な契約書はどれか」が社内で分からなくなります。この場合、最初にやることは値上げへの回答ではなく、有効な契約書・約款の版と、直近の注文書・請求書を揃えることです。

「据え置き」のほうが危ないケース

金額が据え置かれていても、次の場合は注意が必要です。保守の値上げを警戒するあまり、据え置きと引き換えに範囲が削られていないかを、同じ強さで確認してください。

  • 対象範囲が縮小している:金額は同じだが、対応時間帯が短くなった、応答目標が緩くなった、対象サーバーが減っている
  • 予防的な作業が落ちている:金額は同じだが、セキュリティパッチの適用、脆弱性情報の追跡、バックアップからの復旧テスト、動作確認といった「起きていないときにやる作業」が対象から外れている。障害が起きるまで欠落に気づけないため、値上げより発見が遅れます
  • 人が抜けている:金額は同じだが、そのシステムを分かっている担当者が交代し、引き継ぎが行われていない
  • 実費が膨らみ、役務が痩せている:クラウド利用料の上昇分を月額に吸収した結果、実際の作業に充てられる工数が減っている

据え置きが続く契約ほど、何を買っているのかを毎年確認する機会が失われます。対応時間帯・応答目標・パッチ適用や復旧テストが範囲に入っているかは、契約書の本文ではなく別紙(業務仕様書や受託条件明細)に書かれていることが多いので、値上げの通知が来たときは、金額を確認する機会であると同時に、別紙を開いて対象範囲を棚卸しする機会でもあると考えてください。

値上げ通知の比較例|同じ増額率でも、判断できる通知とできない通知がある

同じ増額率の通知を3通並べます。金額は同じでも、判断に使えるかどうかが違います。

見るところ通知A通知B通知C
根拠条項「保守契約書第◯条第◯項に基づき」記載なし「約款改定に伴い」(改定後の約款の掲載先URLあり)
改定の理由「技術者の人件費上昇」「経済情勢の変化」「サービス内容の見直し」
参照資料公表資料の名称と参照時点を明記なしなし
内訳労務費・実費・その他に分けて増額を記載総額のみ総額のみ
対象範囲の変更「前年と同一」と明記記載なし範囲も変わっているが差分の記載なし
通知日と適用日適用日の3か月前適用日の1か月前適用日の2週間前
更新拒絶の期限との関係「更新を断る場合の期限は◯月◯日」と併記記載なし記載なし
判定説明済み要確認高リスク

通知Bは、悪意があるとは限りません。 契約書に理由の限定も通知期限も書かれていない場合、事業者はこの書き方でも条項上は問題がないからです。だからこそ、向き合うべきは通知の書き方ではなく、次回更新で条項を直せるかどうかになります。通知Cのように値上げと範囲変更が同時に起きているときだけは、その場で差分の提示を求めてください。範囲が変わった後では、前の範囲がどうだったかを確認しにくくなります。

複数社の保守見積もりを同じ条件へそろえて比べる手順は、システム保守の見積書はここを見るにまとめてあります。値上げを受けて他社に声をかける場合は、そちらの条件そろえシートを先に埋めてから依頼してください。

ベンダーへそのまま送れる確認質問8問

値上げの通知を受け取った直後に送る想定の文面です。解約や更新拒絶の意思表示にはなっていませんが、通知の方法や様式の定めは契約書ごとに違うため、送る前に該当条項を確認してください。

そのまま送れるメール文面

件名:保守料金改定のご連絡について(確認のお願い)

◯◯株式会社 ◯◯様

いつもお世話になっております。 このたびご連絡いただきました保守料金の改定について、社内で検討するにあたり、以下8点をご教示いただけますでしょうか。改定そのものに異議を申し立てるものではなく、社内の決裁に必要な確認事項として整理したものです。

  1. 今回の改定は、契約書または約款のどの条項に基づくものでしょうか。条番号と項番号をお知らせください。
  2. その条項が定める通知の期限(適用日の何日前までか)と、今回の通知日・適用日をあわせてお知らせください。
  3. 弊社が今回の改定を受け入れない場合、更新を断る手続きの期限と方法をお知らせください。
  4. 改定率は、月額のどの範囲に対する率でしょうか。実費(クラウド利用料・ライセンス費等)を含む総額に対するものか、役務部分に対するものかをお知らせください。
  5. 増額分の内訳を、労務費/実費/その他の3区分に分けてお知らせください。精密な原価計算までは不要で、区分ごとの概算で結構です。
  6. 労務費の上昇率の根拠として参照された公表資料の名称と、参照された時点をお知らせください。
  7. 今回の改定にあわせて、保守の対象範囲(対象機器・ライセンス数・対応時間帯・応答目標・報告の頻度・パッチ適用や復旧テストの実施有無)に変更はありますでしょうか。ある場合は、変更前後の差分をお知らせください。
  8. 次回以降の改定について、実施の間隔、参照する指数、上限の有無を契約に明記することは可能でしょうか。可能な場合、次回更新時にご相談させてください。

お手数をおかけしますが、◯月◯日までにご回答いただけますと幸いです。 よろしくお願いいたします。

回答をどう読むか

質問この回答なら判断できるこの回答だと材料が足りない
1(根拠条項)条番号・項番号が示され、手元の契約書と一致する「規定に基づき」とだけ返る/条項が見つからない
2(通知期限)契約上の期限と実際の通知日が両方示される通知日だけが示される
3(断る期限)期限と方法(書面か、所定様式か)が示される「ご相談ください」で期限が示されない
4(率の分母)役務部分と実費が分けて示される「月額に対して」とだけ返る
5(内訳)3区分に分かれ、どれが主因か分かる「総額でご理解ください」と返る
6(参照資料)統計名と時点が示される「一般的な物価上昇」と返る
7(範囲の変更)「変更なし」または差分表が示される回答が無い(最も注意すべき状態
8(次回の明記)前向き・後ろ向きいずれでも、可否の回答が返る回答が無い

6に対して「一般的な物価上昇」としか返らない場合でも、それだけで不当と判断しないでください。 前述のとおり、公表資料に基づく説明を超えて詳細な原価情報を求めることは、指針が留意すべき点として挙げている行為に近づきます。必要なのは、判断できる粒度まで分かれていることであって、原価の開示ではありません。

7の回答が無いときだけは、回答が揃うまで先に進まないでください。 値上げと範囲変更が同時に起きているかどうかは、後から確認するのが最も難しい項目だからです。

回答が揃ったあとの進め方

回答を受け取ったら、判断は次の4つに整理できます。「値下げさせる」は選択肢に入っていません。

判断選ぶ条件次にやること
受け入れる根拠条項が示され、内訳が分かれ、対象範囲が変わっていない次回更新に向けて、後掲の7項目の追記を依頼しておく
条件つきで受け入れる金額は妥当だが、次回以降の改定条件が不明確覚書で、後掲の7項目のうち書けるものから足す
期限内に更新を断る対象範囲の縮小を伴う、または根拠条項が確認できない更新拒絶の期限と方法を契約書で確認し、書面で通知する
判断を保留し、情報を揃える有効な契約書の版が特定できない契約書・約款・注文書・直近の請求書を揃えてから再検討する

手元の見積書や契約条件を行ごとに分解して確認したい場合は、見積もり診断ツールで契約範囲のチェックができます。登録は不要で、結果の閲覧までメールアドレスの入力も不要です。ブラウザ内でテキストを抽出し、識別情報をマスクしてから診断します(マスク後のテキストは診断のためにサーバーへ送信されます)。

どの判断を選んだ場合でも、共通してやっておくことが1つあります。 労務費転嫁指針が発注者・受注者双方に求めている行動の2つ目は、価格交渉の記録を作成し、双方で保管することです。同指針は、記録を残すことで双方の認識のズレが解消されトラブルの未然防止に役立つこと、人事異動があっても次回以降の交渉をスムーズに開始できることを、その理由として挙げています。今回のやり取りを記録しておけば、来年の同じ時期に、同じ調査をやり直さずに済みます。

自社の条項に何が足りないか|公共工事の標準約款を物差しにする

「では、どう書いてあれば十分なのか」を測る物差しとして、公共工事標準請負契約約款(昭和25年2月21日 中央建設業審議会決定、最終改正 令和7年12月2日)の第26条を挙げます。表題は「賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更」で、全9項からなります。

この約款は建設工事の請負契約を対象にしたもので、システム保守契約に適用されるものではありません。 工事量・出来形といった建設固有の概念を前提にしているため、条文をそのまま持ち込むことはできません。ここで読むのは、物価変動による価格改定を条文で扱うと、何を決めることになるのかという設計項目のほうです。

決めている項目第26条での定め方保守契約に置き換えると
発動できる時期工期内で、請負契約締結の日から12月を経過した後(第1項)改定の間隔を年1回に固定するかどうか
発動の要件日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により金額が不適当となったと認めたとき(第1項)「経済情勢の変化」より踏み込んだ、賃金・物価という要因の特定
請求できる当事者発注者又は受注者(第1項)下がったときに発注側から減額を請求できるか
参照する資料物価指数等に基づき発注者と受注者とが協議して定める(第3項の(B))。同項の注記は、資料をあらかじめ定め得る場合はその名称(たとえば、国又は国に準ずる機関が作成して定期的に公表する資料の名称)を記入するとしているどの統計のどの系列かを契約書に書き込む
変動のうち誰が負担するか差額のうち変動前残工事代金額の千分の十五を超える額につき変更に応じる(第2項)。1.5%までは改定に反映せず、超えた分だけを反映する免責額の方式小幅な変動を改定に持ち込まないための、免責額の設定
協議が整わないとき協議開始の日から○日以内に整わない場合は発注者が定めて受注者に通知する(第3項・第7項)協議不調時の決め方を先に置く
繰り返しの可否変更を行った後、再度請求できる(第4項)毎年の改定を認めるかどうか
協議の進め方発注者は受注者の意見の趣旨をできる限り勘案し十分な協議を行うよう留意し、協議が整わなかったこと等を理由に不利益な取扱いをしてはならない(第9項)協議したこと自体を理由に関係を悪化させない旨の確認

注目したいのは2つです。 ひとつは、参照資料について「国又は国に準ずる機関が作成して定期的に公表する資料の名称」を書き入れる想定になっていること。前節でCPIの系列名まで特定すべきだと書いたのは、この考え方と同じです。もうひとつは、請求できるのが発注者と受注者の双方だということ。値上げの条項だけが片方向に置かれている契約は、指数が下がったときに何も起きません。

同条には、特定の資材価格の急激な変動に対応する第5項と、急激なインフレーション・デフレーションに対応する第6項も置かれています。国土交通省は自らの資料でこの3種類を全体スライド(第1〜4項)・単品スライド(第5項)・インフレスライド(第6項)と呼んでおり、通常の変動と、通常の範囲を超える変動を別の条項で扱っています。保守契約に置き換えるなら、「毎年の定期改定」と「例外的な急変時の再協議」を分けて書く、ということになります。

次回更新で条項に書き足す7項目

本記事で確認してきたことを、次回更新のときに依頼する項目としてまとめます。この7項目が書かれていれば、来年からの確認は「通知が条項どおりか」を見るだけで済みます。

#書き足す項目書かれていないと起きること根拠にした箇所
1改定の間隔(年1回など)小刻みな改定が積み上がる第26条第1項(12月を経過した後)
2発動の要因の特定(賃金水準・物価水準など)「経済情勢の変化」の一行で発動する第26条第1項/公開約款で理由の限定がない例
3参照する統計名と系列名通知を出す側が有利な系列を選べる第26条第3項の注記/指数を使うなら特定する5点
4基準時(基準年)が改定されたときの扱い5年ごとに計算の前提が崩れるCPIの2025年基準改定
5改定率の分母(実費を含むか、役務部分だけか)実費の上昇を二重に見込むことになる確認質問4
6上限、または「一定割合までは改定に反映しない」免責額上げ幅を条項の側から検証できない/小幅な変動でも毎回改定される第26条第2項(千分の十五)
7値上げの通知期限を更新拒絶の期限より前に置き、双方向にする金額を知る前に更新の可否を決めることになる日数を数える/第26条第1項(双方が請求できる)

7項目すべてを一度に通す必要はありません。 効果が大きいのは7と3で、この2つだけでも毎年の判断は成立します。

根拠資料と適用条件

資料発行元/取得日資料に記載の日付格付け本記事で使った箇所適用条件・注意
民法(明治二十九年法律第八十九号)e-Gov法令検索(デジタル庁)/2026年8月24日取得2026年8月24日時点の施行版一次資料A第548条の2第1項(定型取引の定義)、第548条の4(定型約款の変更。全4項、第1項は第一号・第二号)定型約款に当たるかどうかは、その取引が「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」に当たるかで決まる。個別に交渉して締結したスクラッチ開発の保守契約が当然に該当するわけではない。該当性の判断は弁護士の領域
借地借家法(平成三年法律第九十号)e-Gov法令検索(デジタル庁)/2026年8月24日取得2026年8月24日時点の施行版一次資料A第32条(借賃増減請求権。全3項)を、保守契約との対比に使用建物の賃貸借を対象にした規定であり、保守契約には適用されない。本記事では「保守料には法律上の増減額請求の制度がない」ことを示すためだけに参照している
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和三十一年法律第百二十号)e-Gov法令検索(デジタル庁)/2026年8月24日取得令和7年法律第41号による改正版(2025年5月23日公布、2026年1月1日施行)一次資料A第2条第8項・第9項(委託事業者・中小受託事業者の定義)、第2条第7項第1号(プログラムが情報成果物であること)、第5条第2項第4号(協議に応じない一方的な代金決定)適用には資本金額または従業員数の組み合わせ条件がある。自社が委託事業者に当たらない場合、この法律は適用されない。同条の各号は「政令で定める情報成果物及び役務」に係るものとそれ以外とで基準を分けており、本記事ではその区分を後掲の公正取引委員会・中小企業庁テキストの整理に従って示した。個別の取引が該当するかどうかの判断は弁護士の領域
労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針内閣官房・公正取引委員会/2026年8月24日取得令和5年11月29日策定、改正 令和8年1月1日一次資料A12の行動指針の構成(発注者6・受注者4・双方2)、発注者としての行動②③の本文と「留意すべき点」、第1の3(第2の1及び3の行動を全て適切に採っている場合の記述)、受注者としての行動②で挙げられる公表資料、別添「価格交渉の申込み様式(例)」の内訳4区分と労務費の算定例指針であり、それ自体が直接に権利義務を定めるものではない。指針は、行動指針に沿わない行為により公正な競争を阻害するおそれがある場合に独占禁止法・中小受託取引適正化法に基づき対処するとしている。別添の様式は「例」であり、製造業を念頭に置いた項目立てになっている
労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の改正について内閣官房・公正取引委員会/2026年8月24日取得令和7年12月一次資料A12の行動指針の見出し、令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査の価格協議の状況(60.9%/8.8%/30.3%)、注意喚起文書の送付件数が多い業種の例に情報サービス業が挙げられていること調査の対象は労務費の転嫁全般であり、システム保守契約に限った調査ではない。割合は発注者の立場での回答。同資料の概要欄には改正前の法律名(下請法)の表記が残っている箇所があるため、法律名は指針本体(令和8年1月1日改正)の表記に従った
中小受託取引適正化法テキスト公正取引委員会・中小企業庁/2026年8月24日取得令和7年11月一次資料A適用対象の資本金・従業員数の区分(プログラムの作成・情報処理は3億円の基準、それ以外の情報成果物作成・役務提供は5,000万円の基準)、「プログラムの作成」と「情報処理」の違いと例示法令そのものではなく、公正取引委員会・中小企業庁による解説テキスト。個別の取引がどちらの区分に当たるかは取引の内容から判断されるとされており、契約の名称では決まらない
公共工事標準請負契約約款中央建設業審議会(国土交通省サイトで公開)/2026年8月24日取得昭和25年2月21日決定、最終改正 令和7年12月2日一次資料A第26条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更。全9項)の各項が定めている項目建設工事の請負契約を対象にした標準約款であり、システム保守契約に適用されるものではない。第3項は(A)(B)の選択式で、本記事が引用した注記は(A)に付されたもの。第3項・第7項・第8項の「○日」は契約ごとに記入する空欄
工事請負契約書における請負代金額変更の規定(スライド条項)国土交通省/2026年8月24日取得PDFの作成日は2022年11月21日一次資料A(作成時点の整理)第1〜4項を全体スライド、第5項を単品スライド、第6項をインフレスライドと呼ぶ整理作成が2022年の資料であり、掲載されている条文は第8項までで、本記事が確認した現行約款の第9項は含まれていない。呼称の整理のためだけに参照し、条文は前掲の約款本体から引用した
消費者物価指数(CPI)全国(最新の月次結果の概要)総務省統計局/2026年8月24日取得2025年基準 全国2026年(令和8年)7月分(2026年8月21日公表)一次資料A総合102.0(前年同月比+1.9%)、生鮮食品を除く総合102.1(+1.8%)、生鮮食品及びエネルギーを除く総合102.1(+1.9%)2025年を100とする指数であり、前の基準(2020年基準)の指数値とは水準が異なる
2025年基準改定について総務省統計局/2026年8月24日取得2026年8月7日公表(遡及結果)一次資料A接続指数の位置づけ(引用ブロック)接続指数は過去の指数を2025年基準と比較できるよう換算したもので、変化率は再計算せず各基準の公表値をそのまま用いるとされている。基準時の更新周期と公表開始月は、このページには書かれていないため、下2件を出典とした
消費者物価指数2025年基準改定計画総務省統計局/2026年8月24日取得令和7年11月14日一次資料A「指数の基準時は、五年ごとに更新するものとし、西暦年数の末尾が0又は5である年とする。」という統計基準の引用と、基準時を2020年から2025年へ更新する旨引用部分は、統計法に基づく統計基準(「指数の基準時に関する統計基準」平成22年3月31日付け総務省告示第112号)を同計画が引いたもの。告示そのものは本記事では未照合
2025年基準改定に伴う公表スケジュールについて総務省統計局/2026年8月24日取得令和8年6月19日一次資料A2025年基準による遡及結果・接続指数が令和8年8月7日、全国2026年7月分が令和8年8月21日に公表されること公表予定を示した文書。実際の公表は前掲の月次結果ページで確認した
企業向けサービス価格指数(2026年6月速報)日本銀行調査統計局/2026年8月24日取得2026年7月27日公表一次資料A総平均114.3(前年比+3.2%)、情報通信108.0(+2.6%)、ソフトウェア開発112.1(+3.0%)、情報処理・提供サービス107.5(+1.4%)2020年平均=100であり、消費者物価指数(2025年基準)とは基準年が違う。速報値であり、後日訂正されることがある。本記事の表は消費者物価指数(7月分)と月がそろっていない
SAP Enterprise SupportSAP/2026年8月24日取得ページに更新日の表示なし一次資料A(ただし2026年以降の値は未確認既存契約の initial period と first renewal period の間は値上げしないこと、その後はCPIによる年次の値上げがありうること("subject to contract terms" の限定つき)同ページのリスト価格22%の記載は "until 2025" という期限つきの表現のままで、2026年以降の値は確認できていない。日本語の個別契約に同じ条件が適用されるとは限らない
ソフトウェア保守サービス契約条項株式会社エスアイ・システム/2026年8月24日取得改定告知日2025年9月12日・適用日2025年10月15日一次資料A(公開約款)第6条第2項・第8項(保守料金の見直し・改訂)、第8条(契約期間・自動更新)、第9条(解約及び変更)自社パッケージソフトウェアの保守約款であり、受託開発の個別保守契約ではない。約款本体のみを確認しており、第23条が定める通知の方法の詳細と、当該ページが最新版かどうかは未確認
保守契約規約ラディックス株式会社/2026年8月24日取得制定1996年4月1日/改定2017年11月1日一次資料A(公開約款)基本条項第4条第1項(解約)、第8条第3項(保守料金の改定)、第19条(規約の改定)、個別条項(ハードウェア)第3条第2項、個別条項(カウンター契約)第6条・第7条情報通信機器、複写機・複合機、同社指定の業務管理ソフトが対象。有効期間は「各個別条項にて定める」構造で、自動延長の定めはハードウェアとカウンター契約の個別条項にあり、ソフトウェアの個別条項には無い。経年割増料金10%はカウンター契約の個別条項の定めであり、ソフトウェア保守の相場ではない。文書の日付が古く、当該ページが最新版かどうかは未確認
保守契約約款株式会社デジタルキューブ/2026年8月24日取得2025年8月26日改定一次資料A(公開約款)第11条第3項(期間・自動延長・料金に関する定めの除外・協議)WordPressサイトの保守が対象。当該ページが最新版かどうかは未確認
年間保守サポートサービス規約ゾーホージャパン株式会社/2026年8月24日取得2017年5月1日制定・2021年4月14日改定一次資料A(公開約款)第5条第1項(料金は別途書面)、第9条第2項(更新は注文書型)、第10条(解約)、第15条(本規約の変更)自社製品の保守規約。規約変更の条項が広いことと、料金の額が一方的に動くこととは、この規約では直結していない。当該ページが最新版かどうかは未確認
「通常保守サービス」自動更新に関してアンテナハウス株式会社/2026年8月24日取得ページに更新日の表示なし。自動更新契約は2019年6月1日の約款改定より運用開始と記載一次資料A(1社の公開情報)自動更新契約では更新確認の連絡と見積書の発行が無くなること、契約期間終了の1か月前までに連絡がなければ自動更新されること、更新後の途中解約・返金はできないこと1社が公開している運用の説明であり、約款本体ではない。他社の自動更新が同じ運用とは限らない
本記事の4状態の判定表、通知3通の比較例、条項に書いておくべき5点、6つの日付の逆算、確認質問8問、回答の読み方、判断の4分類koromo編集部一般的な確認観点通知と契約条項の確認手順の整理値上げ幅の相場の根拠ではない。特定の契約に対する法的助言でもない

判定表・比較例・確認質問の文言は、上記の公的資料と公開約款の記載を参考に一般化したものであり、特定の資料からの直接の引用ではありません。原典からの引用箇所は、本文中で引用ブロックまたは表内で出典を示しています。

「保守費は毎年◯%上がるのが普通」という数値は、本記事では示していません。 算定の前提が公開されている一次資料を確認できなかったためです。検索すると相場らしき数値を示す記事はありますが、対象システムの規模・契約形態・調査時期が示されていないものが大半で、自社の判断には使えません。本記事では代わりに、通知を条項と内訳へ分解する手順を示しています。

公開約款の改定条項について確認できた範囲も限られます。 本記事が確認できたのは、Web上で全文を読める4件の約款と、1件の運用説明ページだけです。受託開発の個別保守契約で使われる契約書は公開されないため、個別契約における料金改定条項の一般的な書き方は未確認です。また、保守料の値上げの公表事例についても、年度と改定率の両方が明示された公的な集計は確認できませんでした。

なお本記事は、法的な最終判断を提供するものではありません。契約の解釈、条項の有効性、定型約款への該当性、中小受託取引適正化法の適用の有無については、弁護士にご確認ください。

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